平日の水族館、人気のイルカショー終わりでの出来事。帰りの導線、1台しかないエレベータ。それを取り囲むベビーカーの奥様方。並ぶわけでもなく、エレベータを中心とした同心半円の陣形。どこに並べばいいか分からず、弧の一片に加わる車椅子。誰が先で誰が後か分からない状態、後から後からベビーカーは補充され、弧はどんどん分厚くなる。
奥様方は時間に対して寛容、奥友同士の話しに忙しく、誰も急ぐ様子はない。後から来た人が割り込もうが、詰めればもう一台乗れようが、気にする者はいない。ここにいる成人男性は車椅子一人。こういう状況、レディーファーストで全員、先に乗せる以外ない。ようやく最後、この奥様方が行けば次は自分の番という段階で、「お先にどうぞ」と明るく声をかけられる。もちろん、自分より10分は後から並んだ奥様。遠慮のアピール。「いや、レディーファーストで」というと、「すみません」と久しく旦那さんには見せてないであろう笑みを振りまき、エレベータのドアが閉まる。ため息をつき、ようやく正常なテンションに戻る。